[掲句大意]
[掲載写真 庚申庵の蝋梅 1月20日撮影]
今宵は庵の屋根が、いつになくつやつやと鈍く輝いて見える。よく見ると梅の花が庵の上に散り敷いているのだなあ。
庚申庵はもと草葺きであった。享和二(一八〇二)年二月、野焼きの火が屋根に飛び火して、危うく焼失しかけたことがあった。樗堂はこれに懲りて、屋根を瓦礫にし、庭に池を掘った。翌享和三年に俳友蘭汀が、『樗堂発句集』から百句を選び、評釈を施した『息陰叟百句解』(「息陰」は樗堂の別号)では、「つやつやと梅散る夜の瓦かな」と改められ、『萍窓集』『樗堂俳句集』でもこちらが採られている。庚申庵の戸口前には、樗堂が大きな梅の木を植えていたが、これは、『古今和歌集』の紀貫之の和歌「ひとはいさ心もしらずふるさとは花ぞ昔の香に匂ひける」にちなんだものである。この庚申庵史跡庭園門前の句碑の「草の戸の古き友なり梅の花」の梅も、この木のことである。
解説:庚申庵倶楽部輪読会 今村威